信洋舎製紙所の舎史

1500年の歴史を持つ「越前和紙の里」五箇地区の歴史の一つ

 

信洋舎製紙所の創業者である西野弥平次は1845年6月10日越前国定友村に生まれた。

西野家では代々越前奉書を漉いて家業としてきたが、その流れを受け明治元年(1868年)から、太政官札用紙を漉きはじた。

太政官札は明治政府の紙幣であり抄紙局も設置され越前和紙は大いに潤いをうける。

(この様子は越前紙漉き唄にも歌われ現在にも伝えられています。)

 しかし、明治8年(1875年)抄紙局が東京に王子村に移されると 五箇村の製紙の販路は縮小され紙漉き屋は苦境に陥った。

 

このときの紙漉き屋の東奔西走する様子と実力者真柄武十郎の様子は記録に残っている。

当時弥平次は研究に余念がなくあらゆる紙の抄造をてがけ、品評会にも出展した。

明治18年(1885年)横浜の一商人が越前五箇より、

著名な紙類が 漉かれていることを知り輸出向けの紙を求めてきたが弥平次は資力に乏しく 注文に応じることが出来なかった。

同業の漉き屋たちは、切磋琢磨するが一個人の微力ではなしえる事業ではなかった。

しかしながら、この好機を逸しては製紙業の改良を為すことなく 衰退していくようなものである。 そこで、明治19年(1886年)十数名の有志と図り協力団結し 「信洋社」という会社を設立、研究を重ね新種の紙を開発した。

この紙の名前は「手漉光沢紙」と命名された。

 

光沢紙の抄造については暫くは世の称賛を浴びるが

未だ輸出に適するとは言い難く、器械、試験その他に関する巨額の費用を捻出するのは 難しく社員にも動揺が見られるようになる。 そのため、弥平次は実際にその紙の使用者について 研究する傍ら販路拡張のため、 東京・横浜の外国商館に赴き協力を求めたが、却って紙の欠点を指摘され、 見本品のみを売却して帰ってきた。

 

事の顛末を社員に報告し、器械設置し製造法を改良すれば将来に望みを繋げると説くが、 支持を得ることは出来なかった。

 

この後社員全員が退社。

明治21年「信洋社」は解散。

 

新たに個人経営の「信洋舎」として出発する。(1888年)

「艶附けロールの導入」

弥平次は 常に紙すきの研究を怠らず、三椏を原料としてこれに

苛性ソーダなどの薬品を加えての各種の試験を行い、或いは漂泊に苦心した。

その結果、外国品より数段勝る紙の抄造に成功。

これを手にした外国人が

「紙質強靭で紙面は和紙に似て和紙にあらず、

洋紙に似て洋紙と異なる見本を凌駕する紙である」

と称賛した。

 

明治21年関西での品評会にて「光沢紙」を出品し三等賞を受賞。

その知らせを受け弥平次は関西に赴く。

このとき農商務省大山工務局次長に出会い大いに称賛をされるが、

一つ光沢に欠点があることを指摘された。

当時の越前五箇においては製紙時に光沢をつけるには依然として、 竹をもって盤上にて摩擦をする方法によって行っていた。

大山の一言は弥平次にとっては急所を突かれた思いで、

甚だ残念ではあったが大いに刺激を受けた。

 

明治22年印刷局長得能通昌が五箇を視察。

光沢がなければ、販路は望めないがいかがすべきかと尋ねられた。

これに対して資本薄弱にて器械購入できず全力を挙げ抄造することもできないと 実情を訴えた。

その後福井県農商課に申し込んだところ聞き入れられ、

明治8年抄紙局設置以来の 五箇との関係もあることから、印刷局の厚意によってロール一台の貸下げを受けた。

このロールの導入によって、五箇の紙漉きは面目を一新し旧来の抄紙法にこだわった 同業者にも改良方法を研究し抄造する機運が見られるようになった。

当時の五箇では共同でロールを使用。使用料金は紙の種類ごとに一枚の価格が決められた。

その後に自舎でロール器を購入。

ロールを使った光沢紙世に言う「三椏局紙」

品評会、博覧会に光沢紙を出品し、

数々の受賞を得て世界の舞台に出て栄誉を受ける。

明治26年コロンブス世界大博覧会(米国シカゴ)にて

優等賞状を受ける。

 

明治27年、蒸気機関を購入し諸器械を完備し生産の増強を図った。

(世襲相続の土地家屋を売却して蒸気機関を据え付けた。)

 

明治33年 パリ万国博覧会(仏国パリ)金杯を受ける。

 

同33年には製紙業界の功労者として「緑綬褒賞」を受けた。

 

後に西野弥平次は紙漉きを題材とした水上勉の「弥陀の舞」にも紹介されている。

 

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